所長ブログ

貸倒引当金の設定による節税②(一括評価金銭債権①)

投稿者: shigeru yamada [ 2009 年 2 月 1 日 ]
カテゴリ: 決算直前の節税対策

最近「派遣切り」についての報道が多いですね。

派遣契約を解除されて「年末の所持金が200円しかありません」なんて方もいましたね。

TVでは「派遣切りする会社が悪い」であるとか「危機意識の低い派遣労働者が悪い」などと様々な意見が交わされています。

メディアは前者の意見が多いように感じますが。。。

「派遣労働者=社会的弱者」であり、「守られるべき存在」という考えも勿論わかります。

しかし必ずしも「経営者=社会的強者」ではないことも理解しなければなりません。

中小企業の経営者の中には、従業員よりも安い給料で、かつ何千万円、場合によっては億を超える借金を抱えている方もいらっしゃいます。

その精神的な負荷は、年越しを200円で過ごしている派遣労働者よりも少ないのでしょうか?

「物事を一つの側面からしか見ないこと」や「思い込み」は、大きな間違いを引き起こす原因にもなると思います。

メディアの一方的な報道に惑わされることなく、常に様々な視点から物事を考える「広い視野」を心がけたいものです。

 

では本題です。

今日は貸倒引当金の設定のうち【一括評価金銭債権に係る貸倒引当金】についてご説明します。

まず設定の対象となる「一括評価金銭債権」の範囲についてです。

一括評価金銭債権とは「売掛金・貸付金・その他これらに準ずる金銭債権」で「個別評価金銭債権とされたもの以外」のことをいいます。

「個別評価金銭債権」については次々回からご説明します。

この「一括評価金銭債権の期末残高」に「貸倒実績率」を乗じた金額が、税法上経費計上が認められる貸倒引当金の設定金額となります。

では「貸倒実績率」とはなんでしょうか?

「貸倒実績率」とは過去3年間の実際の貸倒発生額に基づく割合をいいます。

多少解りづらいため事例を用いてご説明します。

 

【前提】

平成21年3月決算の場合

平成20年3月決算  一括評価金銭債権の額     10,000,000円
              期中に生じた貸倒損失の額    500,000円

平成19年3月決算  一括評価金銭債権の額     12,000,000円
              期中に生じた貸倒損失の額                    0円

平成18年3月決算  一括評価金銭債権の額      8,000,000円
              期中に生じた貸倒損失の額    250,000円

 

(500,000円+0円+250,000円) / (10,000,000円+12,000,000円+8,000,000円) =0.025

上記のような場合の貸倒実績率は「2.5%」となります。

本当は多少計算方法が異なるのですが、細かくなるので割愛しています。

 

さて、もし平成21年3月末日時点での「一括評価金銭債権」の金額が一千万円だったとします。

この場合、当期に「貸倒引当金」として経費計上できる金額は

10,000,000円 ×2.5% = 250,000円

となります。

 

キャッシュアウトを伴わず、決算月終了後も経費計上が可能である「貸倒引当金」はとても便利な制度ですので、是非ご検討頂ければ幸いです。

さて、貸倒引当金の設定金額は「期末の一括評価金銭債権の額」と「貸倒実績率」により計算しますが、「貸倒実績率が0%の場合」も考えられます。

その場合には「貸倒引当金の設定は不可能」なのでしょうか?

実は中小企業に限り特例が存在します。

明日はその「中小法人等の特例」についてご説明します。

それではまた明日(^O^)/