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記事紹介「”中小企業を生活保護に追い込むな”板橋区立企業活性化センターの取組み」

投稿者: shigeru yamada [ 2013 年 4 月 23 日 ]
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「板橋区立企業活性化センター」の取組みを紹介した面白い記事があったので紹介します。

他の自治体にも同様のサービスがある場合がありますので、”もしもの場合”に備え、自身が事業を行っている自治体にどのようなセーフティーネットがあるのかを調べておくのも重要かもしれませんね。

以下WEDGE5月号より(原文のまま)

「中小企業は苦しんでいる。放置して生活保護に追い込んでいいのか。支援すれば必ず良くなる。どうしていいかわからない経営者に救いの手を」。そう語る中嶋修・東京都板橋区立企業活性化センター長の支援現場を追った。

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 「主人のことで真っ暗だったのに光が見えました。中嶋さんのおかげです」

 東京・六本木の「いろり焼 門次郎」。鰤しゃぶが有名なこの店の中村由加里さんは、昨年末に旦那さんが病で倒れてから、資金繰りも含めた店の経営を預かる立場となり追い詰められていた。「介護と経営の両立は無理かも」と思って電話したのは自宅のある東京都板橋区役所。「相談窓口がわからなくて。いくつか担当を回された後、活性化センターの電話番号を紹介されました」。

 中嶋修さんは、板橋区立企業活性化センター長を務める。センターは創業支援の場として区が2002年に設立したが、「孤独な経営者が気軽に相談できる場を」との思いから08年末に経営改善支援チームを発足させた。

 「初めての電話で『今日は予定が一杯なので明日来てもらえますか』と仰った。そんなにすぐ対応してくれるのかと驚いた。そして最後に『大丈夫。頑張りましょう』って。その言葉に救われました」(中村さん)

 中嶋さんはその電話の夜、時間を捻出して、客として店を訪れた。「一見さんなのにボトルを入れてくれた。名前を聞いたら中嶋さん。電話の方だとピンときました。この人は来るのを待ってる人じゃない、自分の足で動く人なんだと。それ以来、あらゆることでアドバイスを頂いてます」。

 センターは、弁護士、税理士、元営業マンなど、その道に長けた専門家を180人揃える。再建の方向性にメドをつけたら、「門次郎」に適した専門家を送り込むつもりだ。

 4月1日。相談の電話を受けて間もない支援先を訪問するというので同行させてもらった。ある部品メーカーA社の事務所である。

 「借入の1本ごとに詳しく教えてもらえますか?」。各金融機関が発行している返済予定表を見ながら、借入残高、月々の返済額、担保・保証の内訳、条件変更(リスケジュール)の有無を確認していく。条件変更とは、元本の返済を一旦猶予あるいは減額してもらうこと。亀井静香金融相(当時)の肝いりで09年末に施行された金融円滑化法で、金融機関は条件変更の申し出にできる限り対応すべし、とされた。ただし、リスケになると、新規の借入はほとんどできなくなる。

 A社は売上が落ち込み、借入が過大になっている。昨年2月、取引があったNEC埼玉(携帯電話の生産子会社)が事業縮小を発表。信用金庫にリスケをしてもらったが、再び資金繰りが厳しくなっている。3月末、NECが携帯事業からの撤退を検討と各紙が報道。社長は困り果て、活性化センターを訪れた。

 「いくつか新しい注文が来ているが、先に原材料費がかかってしまうのでおいそれと受けられない。売上の見込める新商品もやっと開発できたが、その営業活動やお客さんごとのカスタマイズにも費用がかかる。あと1000万円ほど軍資金を融資してもらえればなんとかなるんだが……」

 そう語る社長に中嶋さんは「リスケを受けている会社が簡単に融資を受けられると思ったらいけませんよ」と厳しい。「原価率が高いから下げる努力をしてください。注文が来そうなら相手から発注書をもらってください。ダメなら請書でもいい。新商品については計画書を作ってください」。

 社長はいまひとつ乗り気ではない。中嶋さんは言葉を続けた。「金融機関はみんな本部の稟議を通らなければ貸してくれません。『リスケしてる企業になぜ貸せるんだ?』。そういう反論に応えられるだけの根拠を担当者に渡してあげないと。一緒に金融機関の交渉にも行きますから。給料を我慢してもいいと社員は言ってくれてるんでしょ? そんな社員いませんよ。社長がこれまで頑張ってきたからみんな支えてくれてるんです。社長、大丈夫。頑張りましょう」。その後、経理を担当する奥さんに見やすい資金繰り表の作り方を教えた。