今回は法人の業務の用に供する車両や賃貸物件が、法人名義で契約が出来なかった場合の取扱いについてご説明させて頂きます。
法人の業務の用に供するものですから、本来は法人名義での契約が大原則です。
しかし、設立間もない法人や、債務超過の法人などは、信用面からオートローンの契約や賃貸借契約を断れるケースが多々あります。
この様な場合、苦肉の策として下記のような「確認・合意書」という、一種の覚書を法人と個人の間で締結します。
※個人から法人へリースや賃貸する方法もありますが、今回は割愛します。
法的に担保された書類ではありませんが、税法は「名義」ではなく「実態」を重視しますので、実態として法人の業務の用に活用しているのであれば、そのことを明確にすることにより、法人の経費として認められる公算が高まります。
賃貸物件は家主さんから「実態は法人で使う旨」について承諾書を貰っておくと、さらに良いと思います。
実際、今まで税務署調査で「個人で契約して法人で活用している経費」を否認されたことは一度もありません。
~法人利用の車両を個人名義で購入したケース~
確認・合意書
株式会社○○○(以下、甲という。)と○○ ○○(以下、乙という。)は、下記表示車輌の購入及び利用に関し、次のとおり確認し合意する。
<購入車輌の詳細>
(車 名)
(グレ ード)
(型 式)
(登録 番号)
(年 式)
(購入名義人)
(契 約 日)
(購入 価額)
記
1 上記表示の車輌(以下、本件車輌という。)の購入に係る名義人は乙となっているが、これは本件車輌の購入に際し締結したオートローンが、甲の名義では認められなかった為であり、仕方なく乙の名義を借用したものである。
2 本件車輌の使用は甲の管理下において、甲の事業運営のために利用され、乙個人としては一切関与しない。
3 本件車輌の利用に関して乙が名義人として負っている責任及び義務はすべて甲が負うものとし、甲が乙の名義をもって完全に履行しなければならない。
4 賃借後、本件物件から生ずる利益の享受及び費用の負担は、すべて甲に帰属するものとし、乙には利益を享受する権利及び費用を負担する義務はない。
5 本確認・合意書に記載のない事項については、甲乙が協議のうえ信義則に従い誠実に処理するものとする。
本確認・合意の成立を証するため、本書を2通作成し、記名押印の上、甲乙が各1通を保有する。
平成○○年○○月○○日
甲(使用者)
本店所在地:
商 号:株式会社○○○
役職・氏名:代表取締役 ○○ ○○
乙(名義人)
住 所:
氏 名:○○ ○○
~法人利用の事務所を個人名義で契約したケース~
確認・合意書
株式会社○○○(以下、甲という。)と○○ ○○(以下、乙という。)は、下記表示物件の賃借に関し、賃貸借契約書締結日以降、次のとおり確認し合意する。
<賃借物件の表示>
(住 所)
(賃 貸 人)
(契約名義人)
(契 約 日)
(月額 家賃)
(共 益 費)
(敷 金)
(礼 金)
(そ の 他)別紙「賃貸借契約書」の通り
記
1 上記表示の賃借物件(以下、本件物件という。)の賃貸借に係る名義人は乙となっているが、これは賃貸人との賃貸借契約の締結が甲名義では出来なかった為であり、実態は、甲の事業用としての使用に限られる。
2 本件物件の賃貸借に係る費用は、全て甲が負担し、乙個人として一切負担はしない。
3 本件物件の使用は甲の管理下において、甲の事業運営のためにのみ利用され、乙個人としては一切関与しない。
4 本件物件の賃貸に関して乙が名義人として賃貸人に負っている責任及び義務はすべて甲が負うものとし、甲が乙の名義をもって完全に履行しなければならない。
5 賃借後、本件物件から生ずる利益の享受及び費用の負担は、すべて甲に帰属するものとし、乙には利益を享受する権利及び費用を負担する義務はない。
6 本確認・合意書に記載のない事項については、甲乙が協議のうえ信義則に従い誠実に処理するものとする。
本確認・合意の成立を証するため、本書を2通作成し、記名押印の上、甲乙が各1通を保有する。
平成○○年○○月○○日
甲(使用者)
本店所在地:
商 号:
役職・氏名:代表取締役 ○○ ○○
乙(名義人)
住 所:
氏 名:○○ ○○
以上です。
今回の「確認・合意書」は個人名義でしか契約が出来ない「ゴルフ会員権の取得」にも準用可能です。
大切なのは「実態」ですので、例え法人名義で購入した車両であっても、社長や親族が私的にのみ利用している様な場合には、当然法人の経費としては認められませんので、ご注意願います。
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